text_smallplace.jpn of sheepphoto

祖母はとても小さな島で生まれた。
島のはしからはしまで、10分とかからないようなところ。
昔々、漁で栄えるその島には、100人以上の漁師が住んでいたそうだ。

彼女は幼少のわずかな期間だけをその島で過ごす。
「家の窓からのぞくと、海に続く崖がすぐ近くに見えた」
それが彼女が覚えている、唯一の島のイメージ。

幼い記憶 ― 波の音、潮のかおり、夜の海への畏怖、身体全体を通して感じる、ぼんやりとしてはかないイメージ ― は、予感や不安の象徴のように、彼女の人生に影のようについてまわったのではないだろうか。


かつての島民の多くは去り、今はもう10人ほどの人々が静かに暮らしている。
いずれはだれも住まなくなるかもしれない島。
島の歴史と人々の人生が重なり合って見えてくる。
いつかはただ島の名前だけが残り、遠くから眺められるだろう。

祖母の住んだ家はもうなくなっていた。
もうだれも訪れることのない彼女の記憶のなかの島に、彼女の見た風景を思い描く。