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H氏との出会いは札幌の中心にほど近い、彼が住んでいた小さな家の片隅でした。
すでに取壊しの決まっていたその家に、残されたいくつかの家具と一緒に古いガラス乾板が置いてあったのです。写真を1枚1枚ほこりを払い光にかざしてみると、そこにH氏の気配が立ち上がりました。そうすると、些細な壁に残る古い傷跡さえもが、彼が見た光景のように鮮やかによみがえるのでした。ぼくはH氏と彼の家の記憶の一部を引き継ぐことにしました。
日々は新陳代謝を繰り返し、いつしかH氏と彼の家の記憶も消えてなくなるでしょう。家はその小さな箱のなかにささやかな歴史を刻み込み、はかない物語を語りだしていくものでした。そしてH氏と彼の家がなくなった今、ぼくはその家そのものになりました。